国際保健医療
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「出産のヒューマニゼーション」概念のラテンアメリカ諸国の法令・政策への波及と包括
笹川 恵美春名 めぐみ三砂 ちづる
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2021 年 36 巻 2 号 p. 73-87

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抄録

  目的

  2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」は、2030年までの持続可能な実現に向けて、グローバルなパートナーシップの重要性を強調した。出産のヒューマニゼーションは、ブラジルで1996~2001年に実施された「家族計画母子保健プロジェクト(光のプロジェクト)」の根幹となる概念である。ラテンアメリカでは、その概念は、各国の関係法規の中で示されるようになっている。本研究の目的は、出産のヒューマニゼーションの概念が、ラテンアメリカ各国の出産のヒューマニゼーションに関連する関係法規の整備、およびその概念の地域的拡大や持続可能性に、どのように寄与してきたかを明らかにすることである。

方法

  ラテンアメリカ地域20ヵ国の政府や保健省のウェブサイトを検索し、「humanization of childbirth」、「humanized care」等のワードが使われている、母子保健分野の関係法規と国際技術協力プロジェクトについて調べた。次に、関係法規によって、ラテンアメリカ各国で出産のヒューマニゼーションが、どのように捉えられているかを分析した。

結果

  2001〜2019年を対象としたインターネット検索の結果、16ヵ国で出産のヒューマニゼーションに関連した関係法規が成立し、4ヵ国で国際技術協力プロジェクトが実施されていた。出産のヒューマニゼーションそのものに焦点を当てた法律は5ヵ国であり、その概念を、包括的ケアの一環として、各国の保健・社会福祉サービスに取り入れることを義務付けていた。

結論

  ブラジルにおける光のプロジェクト以降、この概念の法令化は、ラテンアメリカ全域に広がりをみせた。出産のヒューマニゼーションの概念は、人間の尊重と尊厳を保障する文脈で語られ、結果として法令化されていた。各法律条項の中で、母子保健分野の包括的なケアやサービスの中に、出産のヒューマニゼーションの概念を組み込むことを明確に意図して整備されたことで、この概念の持続可能性が強化されたと示唆された。

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© 2021 日本国際保健医療学会
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