国際保健医療
Online ISSN : 2436-7559
Print ISSN : 0917-6543
原著
日本の在住外国人における医療アクセスが困難な人の特徴とアクセス抑制因子および効果的な支援策に関する混合研究
森田 直美金森 万里子能智 正博近藤 尚己
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2021 年 36 巻 3 号 p. 107-121

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抄録

目的

  医療アクセスが困難な在住外国人の特徴、アクセスの抑制因子、および効果的な支援方法を検討することを目的とした。

方法

  混合研究法の説明的順次デザインを用いた。量的研究では、関東圏に住む522人の外国人を対象とした医療利用に関する横断研究データを二次利用した。受診抑制は、「あなたは、1年以内に発熱、頭痛、発咳、鼻汁、腹痛、下痢、胸痛、精神衛生上の問題、ケガ、その他が3日以上つづいたことはありますか」という質問に対して「はい」と答えた人のうち、「そのうち最も重い症状があった時、日本で受診しましたか」という質問に対して、「いいえ」と答えた者を受診抑制「あり」と定義し、受診抑制に関連する要因を探索した。次に質的研究として、量的研究で明らかになった特徴を持つ者が多く集まる無料の「外国人のための医療相談会」に2回出向き、外国人来場者161人の中から11人、190人のボランティアの中からコミュニティ通訳者を含む支援者3人、ならびに無料低額診療事業を実施している病院で加療中の外国人患者2人に半構造化面接を実施した。

結果

  量的研究から受診抑制は、男性、独身、独居者や低収入世帯での割合が高く、在留資格別では留学生、技能実習生、特定活動(難民認定申請者)に多い傾向があることがわかった。また、健康保険未加入や非正規滞在は受診抑制と強く関連していた。質的研究により、健康保険未加入や非正規滞在など医療アクセスが困難な状況下では、コミュニティや支援者のネットワークが助けとなっていることが明らかになった。

結論

  日本の在住外国人において、社会経済的理由と受診抑制とが関連していた。Levesqueら(2013)の医療アクセスのプロセスと要素に関する枠組みに基づき整理した結果、「医療ケアを探す」プロセスにおける非正規滞在者においては日本人のNPO職員、ソーシャルワーカー、弁護士を含む専門家による支援が有効である可能性がみられた。特に在留資格がないなど法規上不利な場合、日本の公的医療制度を利用できなかったり、施設に収容にされている期間中の行動規制や物理的行動制約により受診が制限されている場合では、日本の制度に熟知した専門家が欠かせない。支援においては、医療保険や無料低額診療制度、医療機関での言語支援や退院後の生活・法律相談を含むフォーマルなサービスに加えて、在住外国人コミュニティや支援者のネットワークとの連携や、それらの機能強化が有効と考えられた。

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© 2021 日本国際保健医療学会
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