国際保健医療
Print ISSN : 0917-6543
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総説
原著
  • 森田 直美, 金森 万里子, 能智 正博, 近藤 尚己
    2021 年 36 巻 3 号 p. 107-121
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/13
    ジャーナル フリー

    目的

      医療アクセスが困難な在住外国人の特徴、アクセスの抑制因子、および効果的な支援方法を検討することを目的とした。

    方法

      混合研究法の説明的順次デザインを用いた。量的研究では、関東圏に住む522人の外国人を対象とした医療利用に関する横断研究データを二次利用した。受診抑制は、「あなたは、1年以内に発熱、頭痛、発咳、鼻汁、腹痛、下痢、胸痛、精神衛生上の問題、ケガ、その他が3日以上つづいたことはありますか」という質問に対して「はい」と答えた人のうち、「そのうち最も重い症状があった時、日本で受診しましたか」という質問に対して、「いいえ」と答えた者を受診抑制「あり」と定義し、受診抑制に関連する要因を探索した。次に質的研究として、量的研究で明らかになった特徴を持つ者が多く集まる無料の「外国人のための医療相談会」に2回出向き、外国人来場者161人の中から11人、190人のボランティアの中からコミュニティ通訳者を含む支援者3人、ならびに無料低額診療事業を実施している病院で加療中の外国人患者2人に半構造化面接を実施した。

    結果

      量的研究から受診抑制は、男性、独身、独居者や低収入世帯での割合が高く、在留資格別では留学生、技能実習生、特定活動(難民認定申請者)に多い傾向があることがわかった。また、健康保険未加入や非正規滞在は受診抑制と強く関連していた。質的研究により、健康保険未加入や非正規滞在など医療アクセスが困難な状況下では、コミュニティや支援者のネットワークが助けとなっていることが明らかになった。

    結論

      日本の在住外国人において、社会経済的理由と受診抑制とが関連していた。Levesqueら(2013)の医療アクセスのプロセスと要素に関する枠組みに基づき整理した結果、「医療ケアを探す」プロセスにおける非正規滞在者においては日本人のNPO職員、ソーシャルワーカー、弁護士を含む専門家による支援が有効である可能性がみられた。特に在留資格がないなど法規上不利な場合、日本の公的医療制度を利用できなかったり、施設に収容にされている期間中の行動規制や物理的行動制約により受診が制限されている場合では、日本の制度に熟知した専門家が欠かせない。支援においては、医療保険や無料低額診療制度、医療機関での言語支援や退院後の生活・法律相談を含むフォーマルなサービスに加えて、在住外国人コミュニティや支援者のネットワークとの連携や、それらの機能強化が有効と考えられた。

研究報告
  • 地引 英理子, 今井 由希子, 岩田 純奈
    2021 年 36 巻 3 号 p. 123-133
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/13
    ジャーナル フリー

    目的

      グローバルヘルス分野の国際機関への就職に当たって必要な資格とそれら機関への就職希望者が保持する資格を比較し、ギャップを明らかにした。

    方法

      グローバルヘルス人材戦略センターの人材登録・検索システムが自動取得する15の保健関連国際機関の空席情報の内、2019年4月1日から2020年3月31日までに公募された2,530の空席情報から「グレード別の必要経験年数」と「必須学位」について集計した。また、同システムに2020年10月現在登録している528人の登録者情報を元に「保有学位別の職務経験年数」、「年代別の職務経験年数」、「年代別の海外勤務経験年数」、「年代別の途上国勤務経験年数」、「希望グレード毎の年代の内訳」について集計した上で、国際機関が求める資格と比較した。

    結果

      国際機関勤務に必要な資格と登録者が保持する資格を比較した結果、主な特徴として、第一に国際機関では、ポストのグレードが上がるにつれて修士号の必要性が高まるが、登録者のうち修士号、博士号、医師免許のいずれかの保持者が全体の76.1%を占めていた。しかし、国際機関における長期的なキャリア・ディべロップメントにとって必須の修士号を持たない人も23.9%いた。第二に登録者の年代別の職務経験年数は、国際機関職員の職務経験年数とグレードの関係に沿っていた。しかし、職務経験の内、国際機関の採用要件として評価されると想定される海外勤務経験と途上国勤務経験を持つ者は、それぞれ全体の56.8%と49.8%であった。第三に自らの職務経験年数に合致しない、低位もしくは高位なグレードのポストを希望する人が9.3%~51.4%いた。

    結論

      国際機関勤務に必要な資格と登録者の資格を比較し、我が国のグローバルヘルス人材の特徴あるいは国際水準とのギャップを明らかにした。それらを補強するための方策として、長期的な展望に立った、将来のキャリア・ディベロップメントを見据えた修士号の選択・取得、20代~30代にかけての積極的な海外勤務経験の獲得、能力相応のポスト・グレードへの応募が必要である。

  • 梅田 麻希, 藤田 さやか, 那須 ダグバ潤子, 陶 冶, 竹村 匡正
    2021 年 36 巻 3 号 p. 135-149
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/13
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    目的

      2018年6月に発生した大阪北部地震災害(震災)において、在留外国人(外国人)が直面した困難や支援ニーズを記述すること、その結果に基づき災害時に求められる外国人支援を円滑にするための具体的な方策を提示することを目的とした。

    方法

      本研究は、半構造化面接により収集したデータを用いた質的記述的研究である。対象は、大阪府北部地震発生時に関西地方に居住していた在留外国人(9名)とその支援者(6名)である。逐語録に起こしたインタビューデータを読み、意味のまとまり毎にコードをつけて、発災時の困難や必要な支援に関する情報を抽出した。これらのコードに共通するカテゴリーから、さらに上位のテーマを抽出した。

    結果

      在留外国人のインタビューからは、«経験した困難»«地震災害に対する準備性に影響を与える要因»«災害時情報ニーズ»の3テーマが抽出された。外国人と日本人との間には、地震経験など震災に対する準備性に影響を与える要因の違いが存在し、外国人が災害時に状況を理解したり、対処したりする際に困難を生じさせていた。また、災害情報に関するニーズが挙げあられ、ITを活用した情報提供が望まれていた。支援者のインタビューからは«実際に行った支援»«支援を行う際の困難や障壁»«求められる支援・対策»の3つのテーマが抽出された。支援者らは、直接的な情報提供や相談支援だけでなく、多機関間のコーディネートを担っていた。災害時に円滑に支援を行うためには、平常時の訓練や機関間協定が役に立つ事が示された。支援・対策の課題としては、効果的な情報伝達や日本人と外国人とのコミュニュケーションの促進、文化的多様性への対応などが挙げられた。これらの課題に取り組むためにも、日頃から当事者、支援者双方の災害に対する関心を高め、災害対応の体制を構築しておく必要があるとの認識が示された。

    結論

      本研究の結果から、外国人は、震災が発生した際に、状況や対処方法の理解に関する困難に直面し、災害情報に関する支援ニーズを有することが明らかになった。外国人の支援ニーズに応えるためには、災害経験や文化の多様性を前提とした情報伝達やコミュニケーションを促進すること、多様な機関が円滑に連携するための体制を構築することなどが必要だと考えられる。

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