国際保健医療
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原著
看護学生の日本語を母語としない人びとへ医療情報を伝達するための知識、書き換えスキルおよび彼らとのコミュニケーションについての認識
松浦 未来樋口 倫代
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2023 年 38 巻 3 号 p. 81-92

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抄録

目的

  誰もが必要な医療を受ける権利、自分の分かる言葉で情報を得る権利を持つ。しかし日本では、日本語を母語としない在留外国人が医療の情報を得ることを言葉の壁が阻んでいると指摘されている。そこで言葉の壁を低くする手段のひとつとして「やさしい日本語」が提案されている。これは相手の日本語能力に合わせて調整した言葉である。英語圏では、医療従事者が患者に平易な英語を用いる方法を検討した研究が行われているが、日本におけるやさしい日本語についての研究は少ない。本研究は、看護学生らを対象としたやさしい日本語に関する講義を実施し、その前後の変化を調べること、講義後の知識と書き換えスキルの関連を調べることを目的とする。

方法

  看護学部2年生80人を対象とした。必須講義内でやさしい日本語に関する講義を行い、前後で同じ質問票を用いて調査を実施した。質問内容は、日本語を母語としない人に情報を伝えることについての知識、実際の書き換え、日本語を母語としない人とのコミュニケーションについての認識に関するものとした。知識項目数、書き換えスキルの得点、認識を前後比較した。また、講義後の書き換えスキル高得点群と低得点群の間で、知識項目数を比較した。知識項目数と書き換えスキル得点の前後比較にはウィルコクソン符号付順位和検定、知識項目数の2群比較にはマンホイットニーのU検定を用いた。

結果

  72人が回答した。講義前後で知識項目数の中央値は2から8へ、書き換えスキル得点の中央値は3から4へ向上し、それぞれ有意な差を認めた(p<0.001)。認識についてはやさしい日本語を肯定する回答が講義後に増えた。しかし、講義後の書き換えスキル得点の高得点群は知識項目数の中央値が10、低得点群は知識項目数の中央値が8で有意差を認めなかった(p>0.05)。

結論

  全体として講義後に回答した知識項目数、書き換えスキル得点とも上がっていたが、知識に基づいて書き換えスキル得点が向上したかどうかは不明である。知識を書き換えスキルに結び付けるには、より具体的な知識や繰り返しの演習も必要であろう。

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