目的
本研究では、ケニア人母親のヘルスリテラシーを検討するための予備的研究として、ヘルスリテラシーの側面を組み入れた子育てにかかわる認識を明らかにし、あわせてケニア人母親のヘルスリテラシーの特性を考察することを目的とした。
方法
ケニアで子育て経験のある日本在住のケニア人母親を対象に、ヘルスリテラシーの3つのレベルを組み入れた半構造化インタビューを行い、帰納的アプローチで分析した。本研究は日本赤十字看護大学の倫理審査と承認を受けて実施した。
結果
ケニア人母親の子育てに関わる認識としては、【強力な母親への子育てサポート】、【ケニアの習慣的な子育て実践を強く勧められる】、【子育て実践における母親の意思決定】、【家族やコミュニティ以外の情報源】、【伝統的な子育て実践に抱く違和感】、【子どもは健康で普通に成長して欲しい】、【10代の妊娠に対する両親の失望と受容】、【子育てにおける信念】という8つのパターンが示された。本研究の結果をNutbeamのヘルスリテラシーの3つのレベルで考察した。機能的ヘルスリテラシーとしては、研究参加者からは識字に関連する発言はなかったが、SNSの活用や医療従事関係者からの情報収集及び理解も可能であり、基本的な機能的ヘルスリテラシーが備わっていると考えられた。相互作用的ヘルスリテラシーでは、周囲の年長女性たちとのコミュニケーションやサポート獲得の能力が示され、批判的ヘルスリテラシーとしては、コミュニティでの知識の共有、伝統的実践に対する認識、情報の取捨選択による意思決定能力が提示されていると考えた。加えて、本研究で示された文化的信念や価値観が母親のヘルスリテラシーに影響を与えてた可能性も示唆されている。
結論
ケニア人母親の育児に関する認識から、ヘルスリテラシーを検討した結果、機能的、相互作用的、批判的ヘルスリテラシーの特性が示された。