2024 年 39 巻 4 号 p. 91-103
目的
非感染性疾患(NCDs)は、低中所得国(LMICs)において 有病率が上昇しており、特に2型糖尿病は社会経済的にも負担が大きいことから、予防、早期発見・治療が求められる。LMICsでは、正規の医学系学位をもつ者に代わってコミュニティ・ヘルス・ワーカー(CHW)が2型糖尿病を予防・管理するケースが報告されているが、その内容については検討の余地がある。本研究では、リソースの限られた地域における2型糖尿予防・管理プログラムに関するCHWの有効的な起用・活用のための示唆を得ることを目的とし、LMICsにおいて2型糖尿病の予防・管理のためにCHWが行っているアプローチを類型化する。
方法
PubMedおよびWeb of Science のデータベースにて、2018年から2023年7月9日までの過去5年の英文原著論文を検索した。以下「diabetes」、「community health worker(s)」、「“国/地域名(LMICs全54ヵ国/地域)」全てをタイトルまたは要約に含む論文を抽出した。介入対象が地域住民でないもの、CHWの介入内容及び結果が未記述のもの、1型糖尿病や妊娠中の糖代謝異常について記述したもの、医療経済学の文脈、レビュー文献を除外した。
結果
抽出された71編から上記基準で選別した結果、11ヵ国、20編を対象文献とした。CHWによる2型糖尿病予防・管理のアプローチはリクルートメント、スクリーニング、リファラル(紹介)、フォローアップ、その他、に大別された。全てのカテゴリにおいて、アプローチ形式としては「訪問」が最多で、他にも公衆の場で呼びかけたり、既存のつながりを活用したりするなど、CHWが対象者のもとに直接出向くアプローチ形式がとられていた。
結論
LMICsのCHWは、地元コミュニティの知識と信頼関係を強みとして、地域住民の2型糖尿病の予防・管理へのアクセスを改善していた。CHWの多様なアプローチが特定され、特に一次・二次予防において重要な役割を担っていた。その役割は、医療従事者が不足しているLMICsの2型糖尿病の予防・管理に欠かせないものであり、正規の医療従事者の業務を分担・代行し、2型糖尿病予防・管理の質向上に貢献していた。