抄録
【目的】 前十字靱帯(ACL)不全膝および再建膝の等速度膝伸展運動におけるトルク特性を分析・比較し、最大トルク(peak torque:PT)に影響を及ぼす因子について検討すること。【対象】 片側のACL再建術を施行した患者24名(男性19名、女性5名)を対象とした(年齢22.8±3.7歳、体重66.1±9.1kg、身長171.1±6.3cm)。手術は全例に対し同側の半腱様筋腱を用いたACL再建術が施行され、半月縫合が11名(内側3名、外側8名)に同時に施行された。【方法】 等速度運動測定機器BIODEX 3-PROを用いて術前および術後の膝筋力を測定した。術後筋力の測定時期は術後6.8か月(6から8か月)であった。測定条件は運動範囲0から110deg.、角速度60、180、240deg/secで、反復回数はそれぞれ5、10、15回とした。各速度の最大膝伸展筋力発揮回のトルクカーブからPT、ピークトルク発生時間(time to peak torque:timePT)、運動開始から等速度に達した時のトルク(加速トルク acceleration torque:AccTq)、等速度に達するまでの時間(加速時間 acceleration time:AccTm)の4つのパラメータを求めた。 検討項目: 1)術前後および患健におけるパラメータの比較、2)測定肢と測定時期間の交互作用、3)PTに最も影響を及ぼすパラメータの検討、とした 統計処理: 検討項目1についてはpaired t-test、2についてはtwo-way ANOVA、3にはmultiple regression analysisを用いた。いずれも有意水準はp<0.01とした。【結果】 1)PTについては、術前よりも術後が、患側よりも健側が有意に大きかった。患側においてはAccTq(60・240deg/sec)が術後に増大し、AccTm(180・240deg/sec)は術後に短縮する傾向にあった。術前の患健比較では、患側の180deg/secのAccTmと 240deg/secのtimePTが有意に遅延していた。2)測定肢と測定時期の間には交互作用を認めなかった。3)パラメータのうち、60deg/secでAccTm、180・240deg/secではAccTqがPTに強い影響を及ぼしていた。【考察】 ACL不全膝の加速トルクの低下と加速時間の延長は、トルクカーブの立ち上がりが緩勾配であることを示し、これらがピークトルク低下と関連する可能性が示唆された。ACL再建膝では加速機能、ピークトルク共に改善していることから、ACL不全膝の関節不安定性や固有受容器の機能低下などが加速機能や最大トルク低下の一因となっていると考えられた。