抄録
我が国は高齢化が進む中で、2025年に75歳以上の後期高齢者が2,000万人を超えると推定されています。コロナ禍の外出自粛の中で、食べる楽しみが再認識されておりますが、お年寄りの日常的な楽しみランキングの上位にも「食事、飲食」があげられています1)。
また健康日本21(第二次)では、健康長寿の延伸を図るうえで、栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒,喫煙及び歯・口腔の健康が6 つの基本要素と位置づけられています2)。これらの基本要素のうち、栄養・食生活、喫煙及び歯・口腔の健康は特に「高齢者の食べること」と関連していますが、いずれも複数の専門分野をまたいだ連携が必要です。さらに、健康寿命の延伸のための主なターゲットは、NCDs(非感染性疾患)とフレイルの予防です。NCDs 及びフレイルとの関連を示すエビデンスが、栄養・食生活と口腔保健の分野のいずれにおいても蓄積されてきています。
本特集では、日常的な楽しみであり、かつ健康長寿の延伸にも深くかかわる「高齢者の食べることを支援するIPE・IPW」を取り上げ、各分野の先生方に執筆していただきました。
社会福祉学の小原眞知子先生には、高齢者の食に関するニーズを充足するための制度、政策と関連領域における多職種連携のあり方について、マクロ、メゾ、ミクロの視点と実践例について紹介していただきました。看護学の西村美里先生には、IPEの実践例を通して口から食べることの意義を考察していただきました。口腔保健学の柴田由美先生には、急性期病院における歯科衛生士の口腔健康管理とIPWによる食支援活動について紹介していただきました。栄養学の杉山みち子先生には、在宅要介護高齢者への栄養ケアマネジメントの進展とIPWの実例、IPE・IPWにおける課題について提示していただきました。歯学の窪木拓男先生には、正しい摂食評価に基づく食支援、栄養支援を行うためのIPE・IPWの実践とその成果を紹介していただきました。
様々な角度から「高齢者の食べることを支援する」取り組みを理解することは、今後,食支援のIPE・IPWを考えていただく一助になると思います。食支援のIPE・IPWが社会に根付くことを期待します。