社会言語科学
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日本文化キー・ワード概念にからむ語用論
高橋 潔
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1999 年 1 巻 2 号 p. 2-12

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抄録
Wierzbicka(1991,1997)は,文化キー・ワードの意味分析を通して文化分析をおこなっている.日本文化のキー・ワードとしては,「甘え,遠慮,和,恩,義理,精神,思いやり」という7つの単語を取り上げ,「自然意味メタ言語」(Natural Semantic Metalanguage)を用いた意味分析を与えている.日本語話者が日常的に用いている「どうぞ/どうか」,「はい/ええ」,「ね」などの語用の中には,英語の対応する表現との対照から,「話者以外のところ(聞き手あるいは(話者の想定している)社会一般の基準)に社会的重心があり,そこからの視点から,あるいはそこからの視点に配慮して用いられる」という[外心的]という特徴が見い出せる.この特徴は,実は,上記キー・ワードの「甘え,和,思いやり」などの意味を構成する要素の一部に反映されていると考えられるが,Wierzbicka流の表記ではこのことは捕らえられていない.[外心的]は,伝統的な日本人の自画像と一致する特徴でもある.
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© 1999 社会言語科学会
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