抄録
面接調査は,調査者の質問と回答者の回答というやりとりで構成されるが,本稿では回答者が二人いる三者面接調査において,ある回答者が質問への答えをほとんどの場合,質問を発した調査者でなく,もう一人の回答者に向けて述べるという事例を分析する.そして,その「変則的」な行為にもかかわらず面接調査が円滑に進められる上では,調査者も含む三者による相互行為と発話連鎖交渉が関わっていること,また,当該の回答者が「回答者としてのふるまい」を保持する上で,回答のし方としては抵触しているかに見える面接調査の参加枠組み自体が効果的に活用されていることを明らかにする.