社会言語科学
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インターネットを利用した日本語作文活動における添削者の態度構造 : コミュニケーションとしての添削の一考察(<特集>言語・コミュニケーションの学習・教育と社会言語科学-人間・文化・社会をキーワードとして-)
鈴木(清水) 寿子
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2009 年 12 巻 1 号 p. 135-148

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抄録
添削を添削者と学習者が結ぶコミュニケーションと捉えると,添削は添削者優位のコミュニケーションといえる.先行研究から,インターネットを利用した作文活動は添削者と学習者の垂直的な関係を水平的に組み替えるといわれている.本研究はインターネットを利用した作文活動「さくぶん.org」に参加する添削者3名の態度構造をPAC分析を用いて分析し,添削者の態度構造からコミュニケーションとしての添削のありようを明らかにすることを試みた.分析の結果,添削者は三者とも垂直的な相互作用に集約されない作文活動を志向し,その意識を学習者の尊重,学習者の学びの最大化にふり向けていた.学習者と対話的な関係を築くこと,添削者自身も成長しようとすること,他の学習者同士の交流を促すことなどが添削者の工夫として見られた.また,添削者としての不安等も確認されたが,これらの感情は添削への意欲を下げるものではなく,添削者の教育的理想の追求によるものと考えられる.添削をコミュニケーションとして捉えることにより,省察的実践者としての添削者像が示された.
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© 2009 社会言語科学会
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