社会言語科学
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語りの進行を回復する実践として共-語り手たちが産出する同期現象
城 綾実細馬 宏通
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2014 年 16 巻 2 号 p. 32-49

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抄録
本稿では,語りを進める上でトラブルが複数連なったときに,参与者たちが語りの進行性を回復するために用いる手続きを会話分析的手法に基づいて検証した.特に,語りの内容を知っている共-語り手たちが同時に同じ形状の発語またはジェスチャーを産出する行為(同期現象)によってトラブルを払拭する過程を分析した.同期現象は複数の資源が収斂することで高められた投射可能性の産物である.同期現象の産出過程を発語だけでなく,語りの持つ構造,視線やジェスチャーなどの身体動作にも注目して分析することで,いまだ十分に解明されていないジェスチャーが持つ投射可能性,そしてジェスチャーの形状および産出のタイミングを予測するための資源を指摘した.同期現象の産出過程において,共-語り手たちによる微細な調整が聴き手に観察可能であることから,共-語り手間における語りの進度の乱れを払拭する役割を同期現象が担い,語りの進行に復帰することをハイライトしうることを示した.
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© 2014 社会言語科学会
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