社会言語科学
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岡山県総社市に暮らすブラジル人住民の言語生活 : 外国人住民の日本語学習支援を考える(<特集>多言語社会日本の言語接触に関する実証研究)
中東 靖恵
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2014 年 17 巻 1 号 p. 36-48

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抄録

近年急速に進むグローバル化と国境を超える人々の頻繁な移動により,日本の多言語状況は拡大しつつある.オールドカマーに加え,ニューカマーと呼ばれる南米やアジア諸国からの外国人の増加は1990年代以後顕著となり,多様な言語・文化背景を持った定住外国人の増加は,コミュニケーション問題をはじめ地域社会に様々な課題を生み出した.本稿では,岡山県総社市に集住する南米系ニューカマーであるブラジル人住民を対象に言語生活実態調査を行った結果に基づき,地域で暮らすブラジル人住民の言語生活の実態と日本語学習を行う上での諸問題,その背後にある様々な要因を明らかにした.日常生活におけるブラジル人住民の日本語使用は極めて限定的であり,ブラジル人社会の中でポルトガル語を中心とした言語生活を送り,地域の日本人住民との関係性が希薄であること,話し言葉能力は日常会話程度,書き言葉能力はひらがな・カタカナ程度であること,日本語学習意欲は高く日本語学習の必要性も強く感じながらも,目本語学習を継続して行えない社会生活環境にあることが明らかとなった.ブラジル人住民が抱える問題の解決には日本語能力の向上が重要であるだけでなく,地域の日本人住民との交流と相互理解が不可欠である.地域における日本語学習支援のあり方を考える時,日本語教室を単なる日本語学習の場としてではなく,地域住民同士の交流の場として機能させる必要がある.

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© 2014 社会言語科学会
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