社会言語科学
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相互行為としてのほめとほめの応答 : 聞き手の焦点ずらしの応答に注目して
張 承姫
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2014 年 17 巻 1 号 p. 98-113

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抄録

日常会話の中でほめが行われるとき,ほめが向けられた側(以下,聞き手とする)はほめに同意することによる自画自賛を回避するため,様々な方法を用いて応答する.本稿で着目するのは,聞き手が自画自賛を回避するため,話し手によってなされたポジティブな評価の焦点を対象の別の側面にずらして応答するというやり方である(以下,焦点ずらしの応答とする).本稿の目的は,この聞き手の焦点ずらしの応答がどのように行われるのか,さらに,ほめが向けられる評価対象のタイプによって,この聞き手の焦点のずらし方がどのように異なっていくのかを,会話分析の手法を用いて記述・分析することである.従来の研究では,相手に対するポジティブな評価はすべて同じほめという前提のもとでほめの応答の分析がなされてきた.本稿は,ほめを行う発話の詳細な分析に基づき,評価対象のタイプを「聞き手自身」と「聞き手が属する場所」とに区別した.そして,聞き手の「不同意」や「部分的な同意」といった応答が,直前のほめの発話の評価対象のタイプと密接にかかわっていることを明らかにした.

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© 2014 社会言語科学会
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