抄録
本研究の目的は,受け取ったメッセージの顔文字の使用が返信文の顔文字の使用に及ぼす効果を明らかにすることであった.実験では,架空の人物からイベント招待のメッセージを受け取る場面を想像させ,受け取ったメッセージに添付された句読記号の有無,添付された顔文字の有無を操作した.参加者は,携帯電話やスマートフォンでのメールのようにメッセージに対する返信文を作り,質問紙に記述した.実験の結果,受け取ったメッセージに句読記号が添付されていた場合に,参加者は句読記号をより多く記述していたが,顔文字を多く記述していなかった.そして,顔文字が添付されていた場合に,参加者は顔文字をより多く記述していたが,句読記号を多く記述していなかった.結果から,人は句読記号と顔文字を区別して,他者のテキストベースのコミュニケーション行動に同調する傾向が示された.このような結果について,受け手デザインの能力の発達,CMCにおける教育という観点から議論を行った.