社会言語科学
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スピーチレベルの選択に伴う場面認識に関する考察 : 韓国人留学経験者へのインタビューから(<特集>スタイルの生成と選択)
田所 希佳子
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2015 年 18 巻 1 号 p. 50-59

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抄録

日本語学習者がある場面において適切なスピーチレベルを選択できるようになることを目指す場合,いかに場面認識を行うのかという意識面に注目する必要がある.そこで,日本語のスピーチレベルに似た体系が存在する韓国語の母語話者で,日本留学経験者の5名を対象に,留学生活を振り返りながら,スピーチレベルの選択に伴う場面認識に関連するエピソードを具体的に語ってもらい,質的分析を行った.来日当初は,全員が日韓のスピーチレベル使用を同じであると考えていたが,様々な場面で違和感を抱き,相違点に気づいた.特に,年齢や立場による上下関係に関する場面認識の日韓差に関して全員が言及していた.しかし,それを自分の中でどのように意味づけるかという点には,対象者による違いが見られた.また,初めから普通体を使用するのか,徐々に普通体に移行するのかという経時的な側面に関しては,親しさの把握の仕方の違いが影響しており,個人の性格に起因した問題となっていた.以上のように,スピーチレベルの選択に伴う場面認識には,個人の考え方や性格による違いが見られた.スピーチレベルを選択する人の価値観が,場面認識とスピーチレベルに反映されているのであり,個人の意識に焦点を当てる必要があるといえる.

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