社会言語科学
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マレーシア人留学生と友人日本人大学生の接触場面における「規範」の違い : 「あいづち」の「規範」からの逸脱
勝田 順子
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2015 年 18 巻 1 号 p. 60-74

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抄録

2011年までの約30年間で,日本国内の外国人登録者数は41%上昇している,また,外国人留学生の数的推移を見ると,東南アジアからの留学生が増加傾向にあることが分かる.これに伴った日本人と外国人の接触場面の増加は,異文化との接触場面の増加であり,様々な問題が発生しうる.これまでの接触場面研究においては,「初対面場面」に関するものが多くなされているが,「友人間の接触場面」についてのものはほとんど見当たらない.本稿では,これまでにあまり研究されてこなかった,日本人と外国人(マレーシア人)の「友人同士」の接触場面会話を扱うことにより,ある一定期間の日本人との接触を経ても気づくことが困難な「規範」の違いを示す.また,マレーシア人留学生は,日本人が持つ「あいづちの規範」とは異なったあいづち行動を行ったが,この「逸脱」に,マレーシア人は気づかず(「留意」せず),また日本人によって「評価」もされなかったために,「調整」が行われなかったことを示す.接触場面における外国人の「あいづち」の研究は多くあるが,外国人の「あいづち」使用の背後にある心理について述べたものは見当たらない.本研究が,日本人及びマレーシア人日本語学習者の「規範」の違い及び,「『日本人が持つあいづちの規範』からの『逸脱』」という現象への理解を深め,今後の接触場面会話を行う際の,双方の理解向上の一助となることを願う.

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© 2015 社会言語科学会
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