本稿では,会話参与者の個性に関する事柄が遊びの対象となる「遊びのフレーミング」の現象をとりあげ,メタメッセージを通して「間主観的個性」が動的に形成される過程を分析する.「遊びのフレーム」では,ジェンダーや社会的役割,キャラクタなどを包含する個性に関し,一般的な価値観のみではとらえられない側面が開示されたり,からかわれたりする.親しい友人間の会話では,1) 会話参与者一方に関するもの,2) 会話参与者双方に共通するもの,3) 遊びにおける相補的な響鳴に表れるもの,といった各タイプでみられ,間主観的に「その人たちらしさ」として形成される.本稿では,対話的かつ間主観的な行為である「スタンステーキング」の概念を用いた質的データ分析により,「間主観的個性」がコンテクストに根差したスタンステーキングの行為によって再生産・蓄積され,会話参与者間の社会的な人間関係構築の礎になっていることを示す.本稿は,社会言語学や言語人類学では,主として社会的カテゴリーの属性としてとらえられてきた「アイデンティティ」を「個性や個人間の関係による特性」との観点からとらえ,メタ・コミュニケーションの相互行為において動的に形成される相対的かつ間主観的な社会的現象であることを提示する.