社会言語科学
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研究論文
態度や関心の共有のための資源としての演技―雑談における演技の分析―
臼田 泰如
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2017 年 19 巻 2 号 p. 43-58

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抄録

本研究では,会話中の演技がどのような行為なのかを明らかにする.特に,「雑談」がどのような活動なのかということを踏まえ,演技者と他の参与者はともに演技をめぐってなにをしているのかという点に注目する.演技は日常会話において頻繁に生じるものであり,これまでにいくつかの研究の蓄積がある.しかし,これまでの研究は演技者が演技によってなにを達成しているのかということを論じてきており,演技者と演技の他の参与者がともになにかを達成するという側面には十分な検討が向けられてきていない.一方,演技と似た形式をとる直接引用発話は態度や関心を共有する手続きとして論じられてきているが,対面会話におけるこうした手続きとしての側面が詳細に検討される必要がある.これらのことに取り組むため,ビデオカメラを用いて収録した会話場面の映像データを使用し,会話分析の手法に主に依拠して,演技とそれに後続する行為との連鎖を分析する.分析の結果,以下のことが明らかになった.演技はそれに先行する発話に対して強い関心や同調的態度を示すものであると同時に,他の参与者に対して態度や関心の共有を促すものである.また演技は他の方法による先行発話や行為への反応に比べ,より容易にその次の位置での他の参与者の同調的反応を可能にする手続きである.

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© 2017 社会言語科学会
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