社会言語科学
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研究論文
政府刊行物の「わかりやすい版」の言語的特徴―知的障害者が制度を理解するという観点による考察―
羽山 慎亮
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2017 年 20 巻 1 号 p. 146-160

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抄録

本稿では,政府が障害者に関わる法律・施策等を解説する冊子の「わかりやすい版」8冊を対象に,一般向け版と対照しながら言語的特徴を考察した.「知的障害のある人の合理的配慮」検討協議会(2015)「わかりやすい情報提供のガイドライン」の中で「リーダビリティ」に関する項目に注目し,計量調査等を行なった結果,「名称等の表記は統一する」「漢字にはルビをふる」「漢字が4つ以上連なることばはさける」という点が「ガイドライン」どおりの「わかりやすい版」の特徴として認められ,一般向け版との対比がみられた.「ガイドライン」以外の項目では,「わかりやすい版」のほうが一般向け版よりも漢語および難解語を避ける傾向にあった.「わかりやすい版」における工夫の度合いは一様ではなく,また,項目によって工夫のされやすさが異なるものの,表記や語彙の面で多様な工夫がなされていることが明らかとなった.同時に,「ガイドライン」に記されている項目の多くが,「ガイドライン」を参照していない知的障害者向けの冊子でもおおむね実行されていることが理解され,文章の「わかりやすさ」のポイントとして認められる可能性が示された.

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© 2017 社会言語科学会
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