社会言語科学
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研究論文
三者間の共同課題解決における「提案交渉」の日露対照分析―親疎関係の違いに着目して―
ツォイ エカテリーナ
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2018 年 21 巻 1 号 p. 207-224

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抄録

本稿は,日本語とロシア語の会話データの比較対照から,三者間の共同課題解決における参加者の親疎関係の違いによる相互行為の差異を分析したものである.研究方法としては,まず「親」「疎」いずれもの対人関係が観察できるよう,友人同士の話者2名および初対面話者1名からなる会話を収集した.次に,解決策の提案に対して即座に同意が示されなかった「提案交渉」の談話を取り上げ,参加者の親疎関係によって交渉パターンを,友人同士間の「提案交渉」に初対面話者が参入するものおよび,友人話者の一人と初対面話者が「提案交渉」しているところにもう一人の友人が参入するものの2種類に分けた.そして,質的分析によりどのように三人目の話者が交渉に参与し,話し合いを左右していくかの2点について考察を行った.分析の結果,日露語ともに,後から交渉に参入する者が交渉中のどちらか一人に支持を示すことにより話し合いを合意に導くことが明らかとなった.また,日本語の会話では友人話者が「提案交渉」に参入する際に友人側を支持していた.一方,ロシア語の会話では,初対面話者が「交渉中のどちらも支持しない」という参入方法を取ることが多く,中立な立場で話し合いを交渉状態から次の段階へと進めていた.

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© 2018 社会言語科学会
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