本調査の目的は,学習動機の継続性に注目し,日本語学校生の学習動機因子および自己形成因子が在籍期間によって異なる値を示すのか,検証することである.都内の日本語学校生406名を対象に,「期待価値理論(Eccles & Wigfield, 1995など)」を援用し,質問紙調査を行った.学習動機に関しては,在籍期間(4ヶ月以内・6~10ヶ月・1年以上)と性(男性・女性)の二要因分散分析を行ったところ,複数の学習動機の因子において,在籍期間の異なる学習者群間に有意差が見られた.特に,在籍期間が1年以上の学習者群において,「内発的価値」と「能力期待」の値が有意に低かった.また,在籍期間が6ヶ月から10ヶ月の男性学習者群の「能力期待」の値が,同時期の女性学習者群よりも有意に高かった.自己形成に関しては,男子学生の方が「自己斉一性・連続性」と「対他的同一性」が有意に低く,男子学生のほうが留学に伴う環境の変化から影響を受けやすいことが推測できた.また,在籍期間が4ヶ月以内の学習者群は,「心理社会的同一性」が他の学習者群よりも有意に値が高かったことから,在籍期間が長くなると,社会の中における自己を不安定に感じ,学習動機が低くなるため,教育現場での配慮が必要であることが分かった.
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