社会言語科学
Online ISSN : 2189-7239
Print ISSN : 1344-3909
ISSN-L : 1344-3909
研究論文
日本語におけるスピーチ・レベルの分析―親しい間柄の依頼,勧誘,謝罪の力関係と負担度―
ボイクマン 総子森 一将
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 21 巻 1 号 p. 225-238

詳細
抄録

本研究は,親しい間柄の会話者間が力関係と状況に対する負担の度合いによって,どのようなスピーチ・レベルを選択するのかを定量的に検証することを目的とする.本研究では,日本語母語話者20名に対し,クローズド・ロール・プレイを用いて依頼,勧誘,謝罪の発話行為における発話データを抽出した.依頼と勧誘は主依頼・主勧誘の発話(Head-act)とそれ以外の発話(Others),謝罪は謝罪表明の発話(IFID)とそれ以外の発話(Others)にわけ,各発話のスピーチ・レベルを大きく3つとそのサブ・レベルの6段階で分析した.その結果,次の3点が明らかになった.1)談話の基調となるスピーチ・レベルは発話行為の種類に関わらず対話者間の力関係によって決定される,2)負担の度合いによりサブ・スピーチ・レベルの表出に差が生じる,3)主依頼・主勧誘の発話はそれ以外の発話よりスピーチ・レベルが高く,Othersではサブ・レベルの比率が主依頼・主勧誘の発話(Head-act)と謝罪表明の発話(IFID)より高い.以上の結果から,これまで注目されてこなかったサブ・スピーチ・レベルを含めることで日本語におけるスピーチ・レベルに関わるポライトネス研究がより精緻化できると言える.

著者関連情報
© 2018 社会言語科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top