社会言語科学
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研究論文
映像コンテンツを利用した教室外日本語学習―タイ人大学生の言語学習ストラテジーの分析から―
岩下 智彦三國 喜保子岩間 徳兼
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2018 年 21 巻 1 号 p. 303-316

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抄録

日本語の映像コンテンツは,多くの日本語学習者によって教室外学習のリソースとして活用されていると言われているが,これまでそこで学ばれる内容や使用方法の詳細は明らかにされていない.そこで,本稿では日本語の映像コンテンツを利用した教室外言語学習の実態を明らかにするため,教室外における日本語映像コンテンツ視聴時の言語学習ストラテジーに関する質問紙調査を行った.分析は,タイの大学で日本語を専攻する大学生159名の回答に対して,(1)映像コンテンツ視聴時に現れるストラテジーの特徴の抽出,(2)ストラテジーの使用傾向の解明の2点を目的として実施した.因子分析の結果,【言葉・表現理解】,【社会文化・内容理解】,【未知語への反応】,【音声への焦点化】の4因子が抽出された.これらは既存の言語学習ストラテジーと重複する特徴を有しながらも,学習環境やリソースの特性によると思われる独自の特徴を持つことが示唆された.また,ストラテジーの使用に基づくクラスター分析の結果からは,〈高学習意識群〉,〈低学習意識群〉,〈社会文化・内容理解重視群〉,〈未知語への反応群〉の4群が示され,学習意識の高低,および使用するストラテジーの組み合わせに特徴づけられた使用傾向も示された.これらの結果は,教室外における日本語映像コンテンツを用いた日本語学習の一端を示したと言える.

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© 2018 社会言語科学会
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