社会言語科学
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研究論文
命令形の使用範囲とその変化―五箇山方言から見る―
牧野 由紀子
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2018 年 21 巻 1 号 p. 317-334

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抄録

行為指示を表す表現は数多くあるが,中でも動詞の活用形としての「命令形」は,最も強力かつ直接的にそれが「命令」であることを表す形式である.そのためその運用にあたっては社会的な制限が存在し,またその制限にはその社会の社会関係や社会構造が影響していると考えられる.本稿では,伝統的な敬語体系が1970年代まで残っていたとされる五箇山方言に注目し,敬語命令形を含む方言命令形が,誰にどのような機能で使用可能かという命令形の使用範囲の分析を行った.その結果, (i)敬語命令形の使用に代表されるように,上下関係を基盤とした伝統的な命令形の運用体系が近年まで存続していたこと(ii)それが1980年代に急速に衰退し,対人配慮の体系へ変化したこと,およびその変化には社会構造の変化が密接に関係していることを指摘する.さらには,五箇山方言での命令形の運用体系の変化は,日本語における行為指示表現の歴史的な変化の道筋を具体的に示す一例になることを指摘する.

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© 2018 社会言語科学会
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