2018 年 21 巻 1 号 p. 4-18
本稿では,会話分析における対照研究のこれまでの動向を概観し,その成果や課題を議論することによって,相互行為のプラクティスの対照研究がもたらす知見の意義を考察する.まず,会話分析の目的が,言語や文化の差異を超えて,人間の相互行為に一般的に存在する諸問題(generic interactional problems)を明らかにし,それを解決する手続き・方法を記述することであるということを押さえた後,会話分析における対照研究の草分け的存在となった1990年代の日英語比較対照研究を紹介する.その後,近年盛んになった大規模な多言語間比較研究プロジェクトを概観し,そこで提唱されている語用論的類型論(pragmatic typology)という新分野,およびそこで用いられている自然コントロール法(natural control method)という方法論を紹介する.