2018 年 21 巻 1 号 p. 96-112
本研究は,日本語とオーストラリア英語の初対面会話において,会話参加者たちがどのように話題を連鎖,展開させているのかを,串田(1997)の「共-選択」の分類を利用して分析,対照した.その結果,日本語では,英語1)以上にポーズや音韻的特徴による「境界づけられたトピック推移」が多く,比較的細切れの話題展開が行われていた.それに対して英語では,「切れ目ないトピック推移」が多く,話題の長い連鎖が見られた.その相違の要因として,英語では局域的,広域的,接線的などの多様な共-選択によって話題を連鎖させているのに対し,日本語では局域的共-選択は多いものの,他の共-選択は英語と比較すると少なく,また時には共-選択を行わず,話題を連鎖させずに打ち切る傾向すらあることが明らかになった.これらの相違が生じる背景には,両言語の初対面関係で期待されている関与(involvement)の程度に違いがあるためだと考えられる.初対面の人間関係においては,英語では日本語以上に,話題や相手への早い時期でのより大きな関与が期待されているとみられ,それが積極的な共-選択につながることを指摘した.また,このような共-選択の方法の相違が,話題の連鎖・展開以外にも,先行研究で示されている自己開示や話題展開のスタイルの相違の要因としても説明できることを論じた.