社会言語科学
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研究論文
介護技術講習会における介助の談話の構造と日本語の問題の分析―EPA介護福祉士候補者を対象に―
大場 美和子
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2019 年 22 巻 1 号 p. 107-124

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抄録

本研究の目的は,介護技術講習会の介護演習において,経済連携協定(Economic Partnership Agreement)の介護福祉士候補者が行った介助のロールプレイに着目し,介助の談話の構造とそこに出現する日本語の問題を明らかにすることである.調査は,EPA候補者にICレコーダーを装着して介護技術講習会の音声を連続収集し,そこから5種類(移動,排泄,衣服の着脱,食事,入浴)の介助の談話24例を分析対象として抽出した.分析では,まず,介助の談話を5つの小談話((1)開始の挨拶,(2)状態の確認,(3)介助の説明,(4)介助の準備,(5)介助の実施)に分類し,小談話別に,発話数,発話機能の集計を行った.この結果,(4)(5)において発話数が多く,多様な発話機能が使用されていることが明らかとなった.また,(5)では,かけ声をかけて利用者の動作を支援するやりとりにおいて,「介助の動作の型」(動作説明・確認→動作要求→かけ声→安全・安楽確認)が数多く出現する点も明らかとなった.次に,日本語の問題(文法,表現,発音,語用)の分析では,(4)(5)に誤用の出現が多く,その中でも特定の文法に誤用が集中していることが明らかとなった.以上より,介助の種類は異なっても,共通した介助の談話の構造と日本語の問題が出現する点を特徴として指摘する.

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© 2019 社会言語科学会
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