本稿では,中国朝鮮族言語使用・意識の多様性に関する研究を行った.延吉市,通化市,大連市という異なる三地域を対象にして,朝鮮族学校を共通のフィールドとし,朝鮮族言語使用・意識のアンケート調査を実施した.アンケート調査を計量分析した結果,中国朝鮮族言語使用・意識には地域差と性別差という多様性があることが明らかになった.そしてその多様性について,アンケート調査だけでなく,先行研究の知見やインタビュー調査の結果も用いながら考察した結果,朝鮮族言語使用・意識の多様性の背景には様々な要因が潜んでいるが,「社会化」という統一的な概念で説明できる可能性を指摘した.