社会言語科学
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研究論文
移動する人々の語りからみる言語問題―ボトムアップ・アプローチによる言語政策のために―
村岡 英裕
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2019 年 22 巻 1 号 p. 91-106

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抄録

本稿では,移動する人々と呼ばれる外国にルーツをもつ人々の語りから彼らの言語問題を考察する.3名の外国人居住者の言語バイオグラフィー・インタビュー調査により,彼らの日本語能力および日本語使用に対する要約的な評価と項目的な評価の語りを分析する.さらに,そうした評価が来日以降のネットワーク形成そしてそこでの参加の在り方とどのように関連しているかを事例研究から明らかにし,彼らと日本社会との間に横たわる言語問題を考察した.言語問題として浮かび上がったのは,多様な日本語レパートリーが形成されていること,日本語非母語話者として位置づけられること,社会参加のスタイルがアイデンティティの葛藤に対する対処の仕方と関連すること,の3点であった.最後に多言語社会の多様性に対応した言語政策は,こうした基礎データをもとに,ボトムアップ・アプローチによって構想することが可能であることを論じた.

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© 2019 社会言語科学会
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