社会言語科学
Online ISSN : 2189-7239
Print ISSN : 1344-3909
ISSN-L : 1344-3909
研究論文
日本語の左方転位構文はいつ,どのように使われるか?
大江 元貴居關 友里子鈴木 彩香
著者情報
ジャーナル 認証あり

2020 年 23 巻 1 号 p. 226-241

詳細
抄録

日本語の左方転位構文は,情報構造上どのような働きをするか,話しことばか書きことばか,という問いのもとでその特徴が記述されてきたが,そのような抽象的なレベルでの記述では実際の使用を十分に捉えられていなかった.本稿は,具体的な言語使用環境(ジャンル)ごとに異なる文法の存在を想定する「多重文法モデル」の考え方を基盤として,コーパス横断的調査に基づいた左方転位構文の分析を行った.その結果,以下の二点が明らかになった.①日本語の左方転位構文は,情報構造のレベルよりも大きな談話展開のあり方に関わり,大きく〈予告・総括〉型と〈項目提示・注釈挿入〉型の二つのタイプに分けられる.②日本語の左方転位構文の特徴は,話しことばか書きことばかという対立では捉えられず,「独演調談話」とでも呼ぶべき,話し手と聞き手の不均衡な関係を前提としたジャンルと結びついている.多重文法で想定されている多様なジャンルの輪郭を明確にしていくためには本稿のような具体的な言語表現から出発してその言語表現のジャンル特性を特定していくというアプローチを取り入れていくことが重要になる.

著者関連情報
© 2020 社会言語科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top