社会言語科学
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研究論文
医学部留学生の医療面接場面におけるコミュニケーションの特徴
品川 なぎさ稲田 朋晃
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2021 年 24 巻 1 号 p. 189-203

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抄録

医療面接場面の留学生と患者とのコミュニケーションにおける留学生のコミュニケーションの特徴を定量的に明らかにする.日本人学生と比較して,留学生にのみ見られる特徴はあるのか,あるとすればどのような特徴かを明らかにする.【方法】模擬患者との医療面接を実施し,The Roter Interaction Analysis System (RIAS)を用いて留学生と模擬患者,日本人学生と模擬患者のコミュニケーションについてそれぞれ分析した.【結果】留学生にみられる特徴として次の2点が明らかになった.①「開かれた質問」が少ないこと,②模擬患者の情報提供に対する「理解の確認」が少ないことである.【考察】①の理由は,「開かれた質問」の難しさが考えられる.留学生にとっては,患者からの情報を処理しながら,さらに患者の答えやすさを考慮しながら即時にいくつかの例示を挙げて「開かれた質問」をすることが難しいと考えられる.また②の理由は,留学生は医療面接の型通りに「質問」することを優先しており,患者の話しを聞き理解することに意識が向いていないと考えられる.【結論】日本語教育の観点から,医療面接の学修課程において単に面接の「型」を示すのみでは留学生には不十分であり,具体的な表現を例示する必要があると考えられる.

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