本稿は,eラーニングの学習場面における受講者のマルチモーダルな行為を分析,考察するものである.2つの調査を行った結果,うなずき,視線,メモという3つのマルチモーダルな行為が分析対象として見られた.うなずきは,(1)学習内容を解釈する途中,(2)解釈が困難な場合に見られ,その様相から,他者を想定せず,解釈の進捗状況に合わせて現れる行為であることがわかった.視線の場合,(1)主に活用する媒体に多く目を向ける,(2)新しい情報や,想定外の情報が現れた場合は映像に注目する,ということが見られた.(1)においては配布資料を主に見る場合はメモを積極的に行い,画面を主に見る場合はインプットを重視することがわかった.(2)の新しい情報に関しては,同じ情報源であっても自分の領域にない方を見ること,想定外の情報に関しては,驚きや緊張から,情報のモードに関係なく視覚的に追うことがわかった.メモの場合,(1)映像を操作しない場合,(2)一時停止してメモする場合,(3)メモした後に映像を巻き戻す場合が見られ,どちらも複数のマルチモーダルな行為を同時に行っている複雑な過程があった.