社会言語科学
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研究論文
自己肯定的評価にともなうやりとりの志向性に関する一考察―自身の得意なことについて話す日本人大学生同士の談話の質的分析を通して―
関崎 博紀
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2022 年 24 巻 2 号 p. 5-20

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抄録

自身を肯定的に評価する言語行動は,避けるものとされている.そのため,実際の会話で観察されるにもかかわらず,そのやりとりの特徴は解明が進んでいない.これを受けて,本研究は実際の会話での自己肯定的評価にともなう相互行為を分析する.そして,そこに通底する志向性の一端を解明する.そのために,親しい日本人大学生二者間で交わされた話題提示会話から,得意なことについて話す場面をデータとして分析した.その結果,自己肯定的評価には,根拠となる事実や記録,実際の行動,または経緯などの具体的な情報が交換されること,その交換を通して,自己肯定的評価の発話者が当該の評価に見合うか否かを,会話参加者が確かめ合っていることが分かった.また,それに続いて,相互に了承可能な評価の調整として,ほめに対して特徴的に見られる各種の応答や自己否定的評価が行われることも明らかにした.これらの結果に関して,先行研究との異同,及び,話者間での評価の均衡の観点から考察を加え,他言語との異同の解明に寄与する可能性を指摘した.

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© 2022 社会言語科学会
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