遠隔コミュニケーションの相互行為分析においては,レイテンシ(遅延)をどのように扱うかが重要となる.本論では,参加者全員を機器なしに同時に俯瞰する絶対時系列と,各参加者から見た相対時系列とを区別し,レイテンシが各参加者にどのような影響を与えるかを,単発のできごとのずれ,同期のずれ,参加者間で認知される発話間沈黙の相違,複数の聞き手が次の話し手として同時に発話を開始する場合のオーバーラップ,聞き手による次の話し手選択と話し手による継続とのオーバーラップの場合に分けて図式化した.また,レイテンシを伴うコミュニケーションの収録方法,および,既成の動画データを分析する際に相対時系列を再現する方法について述べ,その具体的な手続きを簡単な事例分析で例示した.