2022 年 25 巻 1 号 p. 39-54
本論文は,対面コミュニケーションに比べ,話し合いへの参加者の積極的関与が失われ,参加者間の社交が困難になりやすいとされるオンライン・コミュニケーションについて,大学院のオンラインゼミの談話データを用いて,豊かなコミュニケーション活動が行われていることを質的な分析によって明らかにしたものである.参加者の積極的関与については,参加者同士の協力によって話者交替が積極的に行われ,沈黙による気まずさが回避される多様な方略が用いられ,参加者の話し合いへの積極的関与が失われているわけではなく,別の形で維持されていることがわかった.また,参加者間の社交については,オンライン会議ツールで共有されるビデオや音声に積極的に言及することで社交的な発話を行い,接続トラブルや研究上の困難を参加者間で協力しながら解決することで,信頼関係を醸成する姿が明らかになった.