2022 年 25 巻 1 号 p. 70-85
近年,日本の介護現場では外国人の受入れが進み,多様な人々が就労しているが,彼らが主体的な社会的行為者として他者との関係性の中で論じられることは少ない.本稿は,コロナ禍でも急増する介護の技能実習生と受入れ施設の日本人職員,監理団体の担当職員,日本語教師の4者が参加したオンライン「日本語×介護ワークショップ」での「学び合い」の報告である.また,コロナ禍の介護現場における真正の文脈で,主体的,対話的に創生する日本語教育実践を通じて参加者が協働し,日本語やコミュニケーションをめぐる課題と解決へのアクションを探った記録でもある.研究の全ての過程において,参加者を社会的行為者として優先し,他者との関わりや個別・具体性を捨象しない記述を通してコロナ禍という非常時に4者がどのように「学び合い」,その実相から浮かび上がる日本語教育の今後の課題は何なのか,データから明らかにした.分析の結果にもとづき,介護の実習生への日本語教育の課題として,外国人と日本人が共に構築する日本語教育の場の重要性,監理団体職員のような労使関係にない第三者の役割の再検討と介護の専門家との協働をより強化することの必要性を指摘した.