2023 年 26 巻 1 号 p. 165-180
本研究は,大連市在住中国朝鮮族のモビリティとことばをめぐる事例研究である.中国朝鮮族は中朝バイリンガル,活発な移動性という特徴を持つことで知られるが,両特徴の関係を明らかにした社会言語学的研究はほとんどない.そこで本稿では,朝鮮族の新たな居住地として知られる大連市を対象に,そこに在住する朝鮮族のモビリティとことばの関係を探る.現在の社会状況,研究動向を踏まえて,オンライン・インタビュー調査を実施した結果,大連市を中心とした世代を跨ぐ移動,道具・象徴を融合した柔軟な言語観が明らかになり,両者が互いに影響を及ぼし合っていることがわかった.