社会言語科学
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研究論文
知的障害児と教師の相互行為を通した足場づくり―クイズのフォーマットを用いた会話の分析―
長澤 真史甲賀 崇史吉井 勘人
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2025 年 28 巻 1 号 p. 95-110

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抄録

本研究では,知的障害児と教師によるクイズの活動を分析した.最初に教師が出題のやり方を示し,その後に子どもが出題を行った.相互行為を丁寧に読み解いていくことで,発話の位置,発話の形式,行為の投射可能性,身振り等を資源として,互いのふるまいを認識可能な形で示し合う実践が行われていることが明らかになった.そして,こうした実践を通して,クイズのフォーマットが局所的に組織されること,知的障害児と教師の相互反映的なやりとりによってこの組織化が達成されること,フォーマットが柔軟な可変性を持ちうることが示された.また,このフォーマットが足場となり,クイズを行うことだけでなく,一連の出来事を連鎖させて表現すること,経験した出来事への否定的な態度について言語化すること等,知的障害児が独力で行うのは難しいと考えられる様々な行為が達成されていた.事前の計画や通常のやり方のみに固執するのではなく,目の前の子どもが,なぜ今このようにふるまっているのかを問いながら,間主観的な理解を形成していくこと,そして,子どもと共に教育実践をつくっていくことが重要だといえる.

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