抄録
目 的
産後3~4か月の母親の母親役割獲得の状況と妊娠中にイメージした産後の身体的変化と実際のギャップや,産後の生活や育児に関する妊娠中の夫婦間の調整の有無およびその他の要因との関連を検討し,母親役割獲得に必要な妊娠中の支援策を探索することである。
方 法
母親役割の獲得が進み,産後の不安が減少するとされる産後3~4か月の母親を対象とした。2市6施設の3・4か月乳児健診に参加した母親348名に無記名自記式質問紙を配布した。調査内容は,基本属性と「母親役割の受容に関する意識尺度(大日向,1996)」を用いた母親役割の獲得状況,産後の身体的イメージと実際,妊娠中の夫婦間における産後の生活や育児の調整の有無,出産満足度などとした。郵送により回収した113名(回収率32.5%)の回答から不備のあるものを除き107名を対象とした。
結 果
対象者の平均年齢は32.0歳(SD4.0),初産婦は77名(72.0%),経産婦は30名(28.0%)であった。初産婦では産後の「傷の痛み」「乳房の痛み」はイメージしにくく,実際も「イメージより辛い」が多かった。「後陣痛」がイメージより辛いことと母親役割の否定的受容(p=.049),「脱肛」がイメージより軽いことと肯定的受容(p=.016)に有意な関連があった。育児の調整と「肯定的受容では,「児の世話」(p=.035),「児の相手」(p=.036),「児のお風呂」(p=.010)が有意に高かった。家事の調整と否定的受容では「買い物」の調整ありが有意に高かった(p=.026)。母親役割肯定的受容と「出産満足度」,否定的受容と「家事負担」,「育児負担」にはそれぞれ正の相関があった。
結 論
妊娠中における産後の身体的変化のイメージと実際とのギャップ,特にイメージより辛いことと母親役割受容には関連があった。また妊娠中の育児に関する夫婦間調整と母親役割受容には有意な関連があった。このことから身体的イメージのギャップを埋める生活や育児についての調整を促進するなど,妊娠期からの支援策の必要性が示唆された。