2026 年 28 巻 2 号 p. 32-47
これまで,からかいに対しては否定や反論など,「真面目な応答」(Drew, 1987)をすることが指摘されてきた.それに対し本稿では,一人の参与者が肯定的評価を含む形でからかわれた際に,冗談めかしてその評価に同意するという現象に着目し,会話分析の方法論を用いて分析を行った.その結果,肯定的評価を含むからかいに対する評価への同意は,その後の位置でからかっていた参与者の否定的評価や驚き,笑いなどを引き出す連鎖環境を構築することがわかった.その際,からかわれている参与者は,にやけた表情や声色,身体動作を用いて,肯定的評価に対して大げさに同意しているように見せ,からかいの対象を“評価の対象である自分自身”から“評価に同意する自身の発話やふるまい”へと変えさせていることが明らかになった.これらの結果から,からかいに対し,「真面目ではない応答」もからかいの対処法として利用可能であることが示された.また,肯定的評価を含む形でからかわれている参与者は,その評価に同意することで生じる自慢的な性質(Pomerantz, 1978)を利用し,戦略的にからかいに対処していることも示唆された.