社会言語科学
Online ISSN : 2189-7239
Print ISSN : 1344-3909
ISSN-L : 1344-3909
研究論文
行為要求文の強制性判断―学校お便り文書に関する日本語非母語話者と日本人保護者との比較調査―
今村 桜子
著者情報
ジャーナル フリー

2026 年 28 巻 2 号 p. 48-63

詳細
抄録

学校お便り文書における行為要求文に対し「どのくらいの強制力があるか,分かりにくい」「小学校の母語支援者は強いメッセージに訳し替える」などの指摘があることから,日本語非母語話者は行為要求文の強制性を弱く判断すると予想した.日本語非母語話者(JSL) 45人と日本人保護者(JJ) 46人を対象に行為要求文の強制性の程度を調査した結果,設問全体と否定要求文でJSL群はJJ群より強制性を弱く判断する傾向が見られた.特に「古着は受け付けません」などの否定要求文や,待遇表現を伴った言い切り文である「保護者の方にもお手伝いいただきます」においてJJ群との差異が大きい.「よう」,「ましょう」,「お~いただく」等の待遇表現が弱く判断される文の要素として挙げられる.JSL群は言い切り文によって書き手により宣言されるような文であっても,待遇表現が用いられていることにより強制性を弱く判断することが示唆された.強制性判断の根拠について聞き取り調査を行ったところ,JSL群は語彙や文末表現,待遇表現の有無などに加え,「集金は大切だから」など,事柄の重要性も判断の根拠としていることが窺える結果であった.一方,JJ群は内容の具体性や書き手との関係性に配慮し書き手の意図を推察し,行動を決定していると考えられた.

著者関連情報
© 2026 社会言語科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top