産業ストレス研究
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【教育講演】
睡眠障害の治療の最新の動向
北島 剛司
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2025 年 32 巻 4 号 p. 293-300

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抄録

睡眠の不良ないし不足による心身への弊害は近年精力的に調査され,例えば高血圧,代謝性疾患,うつ病等の精神疾患へのリスク等が示されている。不眠については,従来一つの“ 症候” にすぎないと捉えられてきたが,心身の疾患と双方向性に影響を持つという認識より,近年は国際的に,「不眠障害」として一つの独立した疾患と捉えられる流れとなっている。不眠の対処としては,不眠の認知行動療法の有効性のエビデンスが急速に増加し第一選択治療として普及の過程にあることに加え,薬物療法は,ベンゾジアゼピン受容体作動薬からオレキシン受容体拮抗薬などの新規睡眠薬へのシフトが進みつつある。むずむず脚症候群,閉塞性睡眠時無呼吸,概日リズム睡眠・覚醒障害は,いずれもうつ病などの精神疾患との関連が明らかにされつつある。産業衛生において,日中の眠気とそれに伴うパフォーマンスの低下・労働災害,朝の起床困難,精神疾患による休業・復職等との関連から,勤労者に対し適切に睡眠の評価・治療・指導を行うことが重要である。睡眠の問題を考える際には概日リズムの視点を持つことが重要であり,人のクロノタイプ(朝型か夜型か),いわゆる「社会的ジェットラグ」,就寝前のメディア使用の弊害の理由等を理解しておくと,特に若い勤労者に対して健康指導が行いやすい。近年,自閉スペクトラム症もしくは注意欠如多動症などの神経発達症が職場での適応の観点からも注目されているが,睡眠の問題との関連が強い。特に気分症の回復期においては,睡眠・覚醒リズムの回復が重要であり,リハビリテーションと同時に,ここまで述べた睡眠評価と対処を総合して行う必要がある。

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