2025 年 32 巻 4 号 p. 383-397
強度のトラウマ体験に対する精神的なもがきによって生じるポジティブな心理的変容を心的外傷後成長(Posttraumatic Growth: PTG)という。PTG は,トラウマ体験によるネガティブな影響を踏まえ,新たに見出されたポジティブな視点での意味づけが達成されることで獲得される。本研究では,複数の駐屯地に所属する自衛隊員 329 名を対象として任務または任務以外でのトラウマ経験を契機として PTG が達成されるまでのモデルおよび職業コミットメントの反すうへの調整効果を検討した。具体的には,自衛隊員のPTG モデルを共分散構造分析によって,職業コミットメントを調整要因として侵入的反すうが意図的反すうにもたらす影響を,階層的重回帰分析によって分析した。その結果,中核信念のゆらぎが侵入的反すう,意図的反すうおよび肯定的再解釈を媒介して PTG が達成され,QOL が高まることが明らかになった。また,任務トラウマ体験において情緒的職業コミットメントが意図的反すうを高める効果が認められたことから,組織とのつながりによって,任務関連のトラウマ体験に取り組もうとする対処力が促進される可能性が示唆された。一方,非任務トラウマの場合には侵入的反すうが高く,規範的職業コミットメントが高い場合に意図的反すうが高まる調整効果が認められたことから,個人的なトラウマ体験によって組織に迷惑をかけまいとする自衛隊員の責任感の強さが反映されている可能性が示唆された。