抄録
鉱物と水が接触すると,固体表面で電荷が生じ,表面電荷と異符号イオンの濃度は表面近傍で高くなり,同符号イオンの濃度は低くなる。このような界面近傍のイオン分布は電気二重層と呼ばれている。多孔質流紋岩の間隙水の組成を調べるために,流紋岩コアの間隙を水で飽和させ,遠心分離で間隙水を抽出した。遠心力を段階的に上げた結果,遠心力が上がるに連れてNa,Caの濃度は増加したのに対し,Siの濃度は途中で減少した。毛管現象の原理より,小さな間隙ほど水を保持する力が強い。したがって,遠心力が上がるに連れてより小さな間隙中の水が抽出される。小さい間隙ほど間隙水中の電気二重層の割合が大きいため,高遠心力ですなわち電気二重層中でNa+やCa2+の濃度が増加するのは,それらが岩石表面の負電荷に引き寄せられているためと解釈できる。一方,Si濃度が減少することから,Siの一部は陰イオンとして溶存している可能性がある。