抄録
地熱/火山活動に関連する噴気活動は短時間で変動する場合があり,その痕跡が変質生成物の構造に現れる。大分県伽藍岳山麓の塚原鉱山では,強酸性の熱水/噴気活動による変質作用が進行し,岩石中心部の未変質部から,クリストバライトからなる周辺の白色強変質部へ,数mm~数cm幅の成層構造が観察される。各層は,肉眼観察でさまざまな色調を示す。ただし,各層の出現順序は試料により一定ではない。酸性熱水流体による変質段階は,クリストバライト存在度の増加によって代表される。一方,各変質層には,明礬石,カオリナイト,黄鉄鉱,針鉄鉱,赤鉄鉱などが認められる。これらは,熱水流体の地球化学的条件によってその産状が規定される。成層構造の順序変動は,熱水流体に時間的,空間的変動が起こったことを示している。特に,酸化還元条件の変動は,S及びFeを含む鉱物種に強い影響を与えたと思われる。