生命誕生前の地球における有機分子の出現は化学進化の第一段階と考えられてきた。しかし、二酸化炭素、窒素を主成分とする弱酸化的大気を原料として、有機物生成は非常に困難であることが分っている。 本研究では隕石の海洋衝突を作業仮説として、その模擬実験により生体有機分子が生成し得るかどうかを検証する。実験は一段式火薬銃を用い、衝突回収実験を行い。出発試料は鉄、ニッケル、炭素(13C)の混合粉末に水を加えたものをステンレス製の試料容器に窒素ガスと共に封入した。衝突後の試料は水に抽出し、LC/MSによるアミン、アミノ酸の分析を、GC/MSによるカルボン酸の分析を行った。 この結果、13Cから構成された種々のカルボン酸、アミンの生成を確認した。さらに、アンモニアを含む試料においてはグリシンの生成も確認した。 この結果、初期地球において隕石の海洋衝突が生体有機物分子生成としての有効な機構であったことが示唆される。