抄録
赤倉カルデラの火山活動史は,次の4つのステージに区分される。
(1)珪長質マグマの上部地殻への集積により,基盤岩の隆起が生じた。これは,向町-赤倉-中山平のカルデラクラスターを包有する広域的隆起であった。
(2)3Ma頃に直径約5kmの環状割れ目から総体積11km3以上の珪長質火砕流が噴出し,上部地殻が垂直深度1,400m以上陥没した。重力的に不安定となった急峻なカルデラ壁が斜面崩壊を起こし,基盤砕屑物が火砕流と共に陥没盆地内に堆積した。
(3)陥没盆地がカルデラ湖になった頃,カルデラ南東部では,安山岩質マグマが噴出し,水底を溶岩流として流動した。噴出したマグマは水冷・破砕によって角礫化しハイアロクラスタイトを生成させ,水中火山体が形成された。
(4)マグマ溜まりの圧力増加により,一度陥没した上部地殻ブロックが隆起し,カルデラ中央部に直径約5kmの再生ドームが形成された。