抄録
八甲田と八幡平のソレアイト玄武岩について,結晶を含むガラス包有物の岩石記載,微量成分組成,主成分組成変化を基に結晶分化作用の深度推定を行った.カンラン石中のガラス包有物には,アルミニウムに富む輝石,スピネル,斜長石,稀にざくろ石が含まれており,ざくろ石グラニュライト相条件下での結晶化を示す.主成分元素は典型的なソレアイト分化トレンドを示すが,斑晶鉱物の分別では説明できない.微量成分モデリングによると,単斜輝石,斜長石,スピネルの分別がもっともらしい.この組み合わせは,ざくろ石を除いてガラス包有物中の鉱物組み合わせに似ている.ざくろ石は,高圧条件が維持された包有物内での冷却過程における生成物と考えられる.MELTSによる結晶分化モデリングで最も現実の組成変化に近いのは,深度34km(10kb)である.また,分化に伴い含水量が急上昇しており,定置後に周囲の地殻岩石から吸水したと考えられる.