抄録
岩石内に発達するき裂は岩石ー水反応の場であり同時に水の流動場でもあるため,岩石ー水反応ではき裂内流動状態も考慮する必要があると言える.このき裂内部流体流動を表現するためには平行平板き裂モデルが一般的に用いられているが,このモデルではき裂内部の間隙幅が場所によらず一定であり,表現される水の流れもき裂内部全域で一様である.しかし,天然き裂は複雑な形状を持つため,間隙幅は場所によって大きく異なっている.これは,き裂内部が流体流動に大きく関与する領域と関係のない領域に分かれる可能性を示唆しており,実際に間隙構造を考慮したモデルでは,ほとんどの流体がき裂の一部分を使用して流れている事がわかった.これはChanneling Flowと呼ばれ,この面積はき裂全体の面積に対して約10%程度であった.これが岩石と水との反応に主に寄与している面積(Flow Wetted Surface: FWS)だと言える.